松平敬&工藤あかね Voice Duo 〜交錯する声とコトバ〜

2016/11/13(日) 昼公演15:00開演/夜公演18:30開演@両国門天ホール

出演:
松平 敬【バリトン
工藤あかね【ソプラノ、ギター】
今村俊博【助演】

 

現代音楽のコンサートです。

 

以下、プログラムと、予習の過程で見つけた資料

松平頼暁レチタティーヴォとアリア(2016, 初演)
松平頼暁:Why not? (1970)

松平 敬 - 本日は、洗足音大の音楽史の授業にゲスト講師として参加してきました。... | Facebook

鈴木治行:口々の言葉 (2016, 初演)
鈴木治行:口と言葉 (2014)

松平 敬 - 昨晩は、鈴木治行さんの新作《口と言葉》のリハ、作曲者(作詞者?)の鈴木さんにも立ち会って頂きました。... | Facebook

池辺晋一郎:モノヴァランスⅢ (1973)

3/1演奏曲の解題その2:池辺晋一郎『モノヴァランスIII』... - Takashi Matsudaira | Facebook

フランク・デニヤ:二人の演奏者のための音楽(1986,日本初演)
マウリシオ・カーゲル:バベルへの塔 (2002)

http://www.matsudaira-takashi.jp/archive/babel_voice.pdf

今村俊博:読む人Ⅱ-a (2016)

Toshihiro Imamura / Readers Ⅱ-a - YouTube

ペーター・アブリンガー:ソプラノとノイズ(2015)
シルヴァーノ・ブソッティ:ラクリメ(1977)

 

上のは前情報で得たプログラムの順なので演奏順とちょっと違いますね。

 

僕が聴いたのは昼公演でした。先生方、あんな集中力のいる作品を1日で2公演もやるなんてwww並の体力じゃないwww

両国駅周辺のちゃんこ鍋屋さんを通り過ぎて行き、両国門天ホールなんて言うから大きいのを想像していたけど、ライブハウスみたいな大きさの空間でとても居心地がよかったです。

 

開幕はカーゲルのバベルの塔でした。“交錯する声とコトバ”という演奏会のタイトルにも関わらずいきなり言葉をぶっ壊しにくるのが面白い。

確かに演奏会全体を通して、ぶっ壊された「コトバ」たちの断片が面白おかしく使われて、交錯して行く感じが楽しくあり、かなり聞かされるものでした。

演奏者の集中力が凄くて、演奏中とその前後の空気感の違いを肌で感じるのが凄く楽しかったです。

 

どの曲も意味深だったり傍から見てるだけだったら面白かったりして興味深かったです。

 

特に印象に残った曲は

バベルの塔”、“口と言葉”、“why not?”、“2人の演奏家のための音楽”、“モノヴァランスⅢ”、“口々の言葉”、“口々の言葉”

でした。

 

バベルの塔

「本作の楽譜に掲載された18個のメロディはすべて、多言語へ翻訳された同一の文章を歌詞としている。」(プログラムより)という曲で、この日の演奏は日本語→英語→スペイン語→イタリア語の順でバリトンとソプラノが交互に歌う構成だった。

同じメロディを使っていながら、言語による響きの違いが楽しめる作品。

(演奏会の中における)この時点ではまだ言葉が壊れていないからか、両歌手の、比較的普通な曲の歌唱が聴けてよかったというのもいい点。

それぞれの国の“confuse”に当たる言葉の言い方が面白かったです。作曲家の偏見が入ってる感じが。

 

“why not?”

そもそもwhy notって意味よく分かってなかったので、

「why not」の意味と使い方、質問に答える時のフレーズ | 英語 with Luke

とのこと。

つまり、なんでこの曲名なのかは演奏を通してもよく分かりませんでした。

演奏にはトランプを楽譜として用いる!!(???)出てきた記号によって演奏することが決まっている。数字によってその長さが決まる。

ジョーカーは即興!

という作品。

バリトンの「Why not?」の掛け声でそれぞれの演奏者の手元にある1枚目のカードを捲り演奏が始まった。

あとは楽譜(トランプ)に書かれた演奏を終えたら次のトランプを取ってはその楽譜に書かれた演奏をするということを淡々と繰り返す。

それぞれの演奏者が淡々とこなしていく様、演奏者ごとに独立した演奏をしているにも関わらず何故か絡み合う瞬間、「この人ジョーカー引いたなww」みたいなのがわかった時など即興性偶然性からくる絡み合いが楽しい点が盛り沢山でした。

 

“2人の演奏家のための音楽”

この作品は2人の男の演奏家シンメトリックに演奏をしていき、音色の重なりを楽しむ。という曲らしいのですが、作曲家の許諾を得て男と女で演奏することを認めて貰ったそうです。

手を叩くタイミング、グリッサンドのタイミング、アルミホイルをシャカシャカするタイミングを、あの理不尽レベルで偶然なタイミングで合わせろという楽譜の要求が凄いのとそれに応えてほぼ完璧に合わせる技術が凄い。

あれは夫婦の日常よりもお互いのことを思いやってないとできないのでは(笑)

 

“モノヴァランスⅢ”

私でも知っている池辺晋一郎さんという方の作品。

カウンターテナー向けの作品だったんですけど、男性音域の松平先生のバリトンっぷりがそれはそれでかっこよくて…

最後、どこから聴こえてたのか分からないけどdtdrlという音形のオスティナートと、その音形を模したメロディをバリトンが歌い上げる、その絡み合いがかっこよくて惚れました。

 

“口と言葉”、“口々の言葉”

なんというか衝撃を受けました。楽譜は全部言葉で書かれてるらしい。

 口と言葉はバリトンのソロ。

口々の言葉はバリトンとソプラノのデュエット。

なんというか、これこそ文字通り“錯綜する声とコトバ”を表しているような作品だったなぁと思います。

 

演奏会全体として、曲それぞれとして、どうやって音楽を聴くかというのが、何となく見えてくるきっかけになった演奏会になりました。

 

本当にいい機会になったと思える時がくる気がしてなりません。

そういう自分にとっていい経験だったとか言うのを除いても、ただ楽しい演奏会でした。